Ladies and gentlemen! 「みなさん」
▢ 日本航空のアナウンス
・2020年10月01日、日本航空の英語のアナウンスで従来の「Ladies and gentlemen! 」を使わないことになったそうです。
その代わりに「All passengers!」「Everyone!」などが使われるようです、男性、女性をイメージする言葉を気にする人に配慮しての変更とのことです。
このニュースは英国BBCのニュースでも取り上げられていましたが、同じBBCのラジオ番組の中では「Ladies and gentlemen, boys and girls! 」という表現が使われていました。
英語を母国語として使っている国々の人たちにはこの「Ladies and gentlemen! 」という言葉はどのように響いているのだろうかとふと疑問に思ってしまいました。
もしかしたら、日本人ほどこの表現に男性や女性を意識はしないで、「ただ単なる挨拶」のようなとらえ方なのかもしれません。
・結婚すると相手は「配偶者」となります。「配偶者」というのは硬い法律用語のような言葉なので、日常生活ではあまり使うことはありません。
それではなんと言う言葉が使われているのでしょうか。「主人」「旦那」「夫」「ハズバンド」、「奥さん」「嫁」「ワイフ」…いろいろな言い方がありますが、
テレビのインタビューなども含め会話を注意して聞いていると「主人」という言葉を使う人も少なくありません。
考えてみると「主人」という言葉の意味には「夫」を指す他に「一家のあるじ」「自分の仕えている人」という意味もあります。
「主人」と言うと夫婦が対等な立場というより男性の方が上であるような感覚を与えてしまうことはないでしょうか。
ただ、そういった意味などはあまり考えず、ただ結婚している相手という意味で「主人」という言葉を使っている人も多いのではないでしょうか。
▢ 何気なく使っている言葉
・日本語の中には普通に使っている言葉の中で知らず知らず人の心を傷つけているかもしれないものがあることは覚えておきたいものです。
表現の中には人間の体の部位をつかったものがあります。交通手段の意味で「足」を、手段・方法の意味で「手」がつかわれたりします。
例えば、交通手段がないという意味で「足がない」といったり、手段がないという意味で「手がない」という言い方をします。
世の中には、事故や病気で手や足をなくされた方もいます。「まだ帰らないの?」「はい、足がないんですよ」と全く無意識で言ったことがあります。
質問した人が事故で足をなくされた人だったので、言った後にハッとしたことを覚えています。いつも何も考えないで使っている言葉が人を傷つけてしまう場合もあるように思えます。
「Ladies and gentlemen! 」を考えることも大切かもしれませんが、この「手がない」「足がない」という言い方なども考えなおすべきのような気がします。
「手がない」「足がない」という言い方とどれぐらい似ているかはわかりませんが、英語を母国語としている人にとって「Ladies and gentlemen! 」は、
それほど男性・女性を意識させる表現なのでしょうか。実は、ただの挨拶程度にしかとらえていないのかもしれません。
自分は男だと思っている人に対して女性のような扱いをしたり女性のように呼んだりするのはよくないことだと思います(逆も同じことが言えます)。
ただ「Ladies and gentlemen! 」というのは、特定の個人に対して言っているわけではなく、アナウンスしている全員に言っているというのも、
ネイティブにとってはそれほど差別だとか意識するような言い方ではないのかもしれません。
ただこれはネイティブではないので想像するだけで、感覚がよくわからないというのが正直なところです。
police officerという言葉がなく、以前のようにpoloceman という言葉が使われていた場合、女性が I am a policeman. とか、She is a policeman. というのは
確かに違和感を感じますが、「Ladies and gentlemen! 」というのは、これとは少し違うような感じがしています。
日本航空が挨拶を変え、それらが海外にも伝えられたことによって、この「Ladies and gentlemen! 」という表現が英語を母国語とした国々でも残るのか
あるいは別な表現に変わるのか注目して行きたいものです。
▢ 語順
・「Ladies and gentlemen! 」の言い方には別な要素があります。単語が2つある場合に、2つを同時に発音することは物理的にできないので
どちらかを最初にもう一方を後に言うことになります。言葉によってはどちらを最初に言うかでどちらが「主」か印象付けてしまうことがあります。
日本とアメリカのことをいう時に、日本では必ず「日米」と言います。「米日」ということはありません。
これは日本を「主」と考えているからと思われます。これは相手の国では自分の国を最初に言うだけなのであまり問題にならないのかもしれません。
ただし、以前日本と韓国で共同開催されたサッカーワールドカップでは公式的な呼び名を Japan Korea World Cupにするのか、
Korea Japan World Cup にするのか両国で議論になったことがあるようです。
・語順に関しては、日本語でも英語でも慣用的な決まった順番の言い方があります。普通は a knife and fork「ナイフとフォーク」と言います。
a fork and knife 「フォークとナイフ」と言ってはダメなのか…と言われると問題はないように思えますが、やはり聞きなれない言い方だと違和感があります。
ただ、knide を先に言うからと言ってknifeが「主」なのかというとそういうことではありません。男性と女性はどうでしょうか。
どちらが「主」で誰が「従」だと言うことはないですが、「男女」のように男性を先に言うのが聞きなれた言い方になります。
英語でも boys and girls と言っても girls and boys と言うことはまずないと思います。英語でも男性を先に言うのが一般的であるのに
「Ladies and gentlemen! 」は女性を先に言っています。「Ladies に敬意をもって先に言っている」という話を聞いたことがありますが、
真偽のほどは専門家の方に確認するなどしないとわかりません。ただし、「Ladies and gentlemen! 」という言い方が日本に入ってきた時に、当時の日本に該当する言葉はなく、
英語をただ日本語に訳したハズだと思うのですが、「淑女、紳士のみなさん」ではなく「紳士、淑女のみなさん」と言う訳にしたのは時代的な背景もあるのでしょうか。
・ 言葉の順番に関しては、どちらを先に言うかで意味が異なってくる場合があります。
wine bottle は「ワインの瓶」のことですが、bottle wine は グラスなどに入ったものではなく、「瓶に入ったワイン」のことを言っています。
前の単語が後ろの単語を説明する役割をしています。
これまで説明したように、単語の順番は、どちらが「主」かという場合、慣用的な場合、前の単語は説明として使用している場合…などがあります。